鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

Antipodean SF issue 277

豪州のオンラインマガジン AntipodeanSF issue 277 に拙作「もう一度ビーチで遊びたい」の英訳 "Once again on the beach"(translated by Toshiya Kamei)が掲載されました。
死にかけると良い夢が見られるアプリを入れた主人公が、愛犬ロビンと美しいビーチで遊んで、疲れてベッドに倒れ込む掌編です。
Highly recommended.(激しくおすすめ)
webarchive.nla.gov.au

汝窯と古伊万里

  汝窯古伊万里  勝山海百合

 去年の暮れ、中之島大阪市立東洋陶磁美術館汝窯水仙盆をじっくり眺めた帰り、なにわ橋駅の券売機前に戸惑う様子の男性がいたので声をかけた。灰色のギャバジンのコートを着た三十歳くらいの人で、聞けば堂島に行きたいとのこと、切符の買い方を教え、大江橋でも渡辺橋でもどっちで下りてもいいですよと言うと、頭を下げて礼を言ってからこう続けた。
「あなたはとてもいい人だ。お礼に大事なことを教えましょう。誰にも内緒ですよ……」
 困っている外国人に親切にすると無差別テロの予定を教えてくれる都市伝説みたいだと思いながら、黙って耳を傾けた。
「七月十八日は鉄道は避けて下さい。れ、列車が……爆発します」男性の杏仁型の目は黒々と輝いていたものの私の目は見ていない。言うだけ言うと踵を返し、改札口に向かっていった。

 今年の七月、台湾は台南市のホテルに泊まっていた。嘉義にある國立故宮博物院南院を予約しており、行くのを楽しみにしていた。
 朝早く、ホテルのレストランでお粥を食べていて、不意に暮れのことを思い出し、テーブルの向かいに座っている友人に尋ねた。
「今日って十八日やけど、列車事故のニュースとかあらへんよね?」
「ないと思う。わからんけど」
 私は「実は」と去年の暮れに会った男性のことを話し、張作霖爆殺事件は六月四日だし……と言っているうちに、雲が出たのかレストランの中が黄昏のように暗くなった。
「……内緒だって、言ったじゃないですか」
 灰色のコートを着た友人が呟いた。
「約束してへん」
 ぎっと睨むとコートはぺらりと床に落ちて消え、今回は一人旅なのを思い出す。
 台湾鉄道と台湾高速鉄道を乗り継いで嘉義に行くと、列車は無事だったが、その朝、東洋陶磁美術館から貸し出されて南院で展示中の伊万里焼の染付皿が割れていた。


www.moco.or.jp


(二〇一七年、大阪てのひら怪談に投稿)

Rhodora Magazine issue 3

インドはチェンナイのデジタル文芸誌 Rhodora Magazine issue 3 に拙作「麗娘のキノコ」の英訳 "A Girl's mushrooms" (translated by Toshiya Kamei)が掲載されました。
https://rhodoramagazine.in/
「麗娘のキノコ」は 拙著『十七歳の湯夫人』(MF文庫ダヴィンチ)所収。
20090520131909

『オベリスクの門』解説

N・K・ジェミシンの『第五の季節』の続編、『オベリスクの門 』"The Obelisk Gate" by N.K.Jemisin(小野田和子訳、創元SF文庫)に解説を書きました。九月十日発売予定、装画はK.Kanehiraです。
www.tsogen.co.jp
解説では触れなかったし本文中でもその言葉は使われていませんが、本作には柱状節理が出てきます。日本でも各地(福井県東尋坊静岡県の伊豆など)で見られる天然石の六角柱です。

AntipodeanSF issue 276

豪州のオンラインSF誌 AntipodeanSF issue 276に拙作「東京のエッフェル塔」の英訳 "Love, Tokyo style" (translated by Toshiya Kamei)が掲載されました。(アーカイブされました)
大学の先輩の部屋に遊びに行ったら、練習で作った花びら餅(正月に食べる、ゴボウが入った和菓子)を振る舞われる話です。
webarchive.nla.gov.au

20110112152144
画像はとらやの花びら餅。

追記。次号予告にも拙作がありました。来月のAntiSFもお楽しみに。(オーストラリアは春ですね)