鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

「みちのくの仏像」「3.11大津波と文化財の再生」

特別展「みちのくの仏像」(四月五日まで)を観るために東京国立博物館に行ったら、会場の本館前に白いボートが展示してあった。二〇一一年三月の津波岩手県から流されて、太平洋を越えてアメリカ合衆国の西海岸に漂着した岩手県立高田高校の「実習船かもめ」とのこと。大げさでない大きさで、ちょっと乗ってみたくなった。発見されたときには二年間の漂流で船体は海草で覆われ、貝が生息していたそうだ。(特別展「3.11大津波文化財の再生」の展示の一部)
東北で信仰されている仏像の優品が展示された「みちのくの仏像」に、天台寺岩手県二戸市瀬戸内寂聴が長く住職を務めた)の聖観音菩薩立像(重要文化財)が展示されていた。これは東北地方に多い、鑿跡のある木彫だが、あえて彫り跡を残す鉈彫りは、木の中から仏が顕現するさまを表現している……と聞いたことがあったが、”仏典に「仏像を彫る鑿の音には徳がある」という一節があり、鑿跡はそれを表しているのかも知れない”という解説があり、そういう意味もありそうだと腑に落ちた。

特別展「3.11大津波文化財の再生」も開催中(三月十五日まで)なのでそれも観たが、津波で汚損した文化財の補修の成果を目にすることができた。一見すると特に問題のなさそうな郷土資料なのだが、ここまでの状態に戻すのに、そうとうな手間と時間がかかっているらしい。これらの展示を観ていると、比喩でなく、かすかに潮の匂いが感じられた。
国立科学博物館収蔵なので被災はしなかったが、嘉永三(一八五〇)年に岩手県陸前高田市の長圓寺前に落下した気仙隕石の実物も展示中。
被災した博物館の資料をレスキューする迷彩服の自衛隊員の写真もあった。