鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

Going Home / 家路

【注意】死や恐怖に触れたホラー超短編。敏感な方はご注意ください。




  家路 Toshiya Kamei 勝山海百合訳

 ぼくの足首をとらえて川底に引っ張っている誰かか何かを必死に蹴って、なんとか浮かび上がろうとした。水に浮いている草に触れたので掴もうとする。鼻も口も水でいっぱいなので頭の中で叫ぶ。苦しい。息ができない! 息ができない! 心に思い出が浮かぶと、闇がぼくのまぶたに重くのしかかる。
 ママとクリスマスのクッキーを焼く甘い香り。パパはライフルの構え方を教えてくれる。「しっかり持つんだ、そう、しっかり!」 
 最期の息を吐いて目を閉じてしまうと、そこはもう家。


原文 "Going Home"は『Home: An anthology of dark microfiction (Hundred Word Horror)』所収。(カメイさんの許可を得て公開)
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本書にはToshiya KameiのDrabbleが三作掲載。