鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

Makuzu in Horror Month

二月は Women in Horror Monthということで、只野真葛(ただのまくず)を紹介する。
江戸時代に『赤蝦夷風説考』を著した仙台藩医工藤平助の一番上の娘で、名前はあや(綾、あや子とも)、作家で歌人である。
江戸で生まれ育ち、奥女中奉公を経験したのちに、老人のような年上の男と意に染まぬ結婚をするが、泣き暮らしていたのでほどなく離縁される。病弱な母に代わって家内を取り仕切り弟妹を養育し、三十五歳で仙台藩着座の只野伊賀の後妻となり仙台へ移り住む。江戸で育った真葛にとって、白河の関を越えることは死んで生まれ変わるようなことだった。
みちのくは未知の世界であったが、実際には人間が暮らす土地であり、真葛はここで作家としての才能を開花させ多くの文章を遺した。真葛が当地に来てから聞き知った不思議な話や変わった話をまとめたものが「奥州ばなし」で、笛の音を愛した狐の話、化け猫を切った豪胆な武士の話、日本のドッペルゲンガーと言えばこれの「影の病」などが収録されている。
現代語訳が仙台の荒蝦夷から刊行されている。拙訳だが、読むと不思議で楽しく、ちょっと怖いので世の読書子に薦めたい。
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「奥州ばなし」に入っていない怪談「へんぐゑの猫(へんげの猫)」は、いにしえの君主の聡明さと落ち着きぶりに惚れ惚れする。
umiyulilium.hatenablog.com