空蝉(うつせみ) Toshiya Kamei 勝山海百合訳
「マサミ……」彼女はもう一枚皮膚を脱ぎ、僕は眉をひそめる。脱ぐたびに彼女は少し小ぶりになり、祖母が持っていたマトリョーシカ人形を思い出す。
「痛みはある?」僕が尋ねると、彼女は首を振る。いいえ。
僕は彼女の皮膚を床から拾って、日に透かして見る。半透明の薄い表層には彼女の面影がある。まるで低い茂みの上にある蛇の抜け殻のようだ。
「君は僕に何も残さないんだろうね」とつぶやく。
「そんなことない。わたしのうつせみがあるでしょう」
彼女の最期は僕を打ちのめし、僕は涙を堪えるしかない。マサミは幽かに笑って、僕を抱きしめる。
原文の "Beneath Her Skin" はBeneath: An Anthology of Dark Microfiction (Hundred Word Horror) 所収。(カメイさんの許可を得て公開)
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