鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

草餅、カレリアン・ピーラッカ

千葉由香の『小田原遊廓随想録 みちのく仙台常盤町』(カストリ出版)を読んでいたら、私娼を「草餅」と呼ぶと書いてあった。

 仙台では密かに売春する私娼を「草餅」、私娼を抱える店を「草餅屋」と呼んでいた。東北戊辰戦争のころ近在から草餅を売りに来た女性たちが薩長兵士を相手に売春したことに由来するという。

性のやりとりを草餅でカモフラージュするというのは腑に落ちるものがあった。
昨年観たフィンランド映画、ペッカ・パリッカ監督の『ウィンター・ウォー/厳寒の攻防戦』(一九九〇)は、一九三九年十一月に始まった冬戦争で、フィンランドの農村から集められた男たちがソ連と戦う物語だ。
映画の中で、徴兵されて夫が不在の農家の女性と知り合った男が、後日その農家に行き、「カレリアンピーラッカ(カレリア・パイ。カレリア地方の郷土料理)をわけてもらえるかな」と女性に頼むと、同じ部隊の男が奥の部屋から出て来るという場面があった。男はパイを分けてもらったが、帰り道で「おまえも本当はそういうつもりで来たんだろ」と言われて、「そんなんじゃない」と答えていた。パイが目的だと言い張ることで人妻への接近の目的を曖昧にする作戦に見えた。

小田原遊郭随想録の通販/千葉由香 - 紙の本:honto本の通販ストア
千葉由香『みちのく仙台常盤町 小田原遊廓随想録』 | Kastori Bookstore