鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

登高

 九月九日は重陽節で、この日に登高、山や丘のような高いところに行って過ごす習慣がある。
 後漢の頃、方士の費長房が弟子の桓景に「九月九日に災いがあるので、その日は家族全員で高いところに登り、臂に茱萸(しゅゆ)の入った赤い袋をかけ、菊酒を飲むと災いを避けられる」と告げ、その通りにして帰宅したところ、家に残っていた家畜が全て害されていた。以来、九月九日に家族で高いところに出かけ、菊酒を飲む風習が広まったと言われてる。
 杜甫の「登高」や王勃の「蜀中九日」など、登高を主題にした名詩があるが、故郷を偲んだものが多い。家族の行事なので、異郷でその日を過ごす者にはいよいよ寂しさが募ることだろう。
 王維の「九月九日憶山東兄弟」は、故郷と家族を偲び、自分が一人欠けている登高を想像している。

  九月九日 山東の兄弟を憶う


独り異郷に在りて異客と為り
佳節に逢うごとにますます親を思う
遥かに知る 兄弟 登高の処
あまねく茱萸を挿して一人をかくを

 この詩を作った時、王維は故郷山東を離れ長安に過ごしていた。王維、ときに十七歳であった。