鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

小心地滑

以前履いていたクロックスは靴底が磨り減ってグリップしなくなっていた。そのことに気付いたのは上海に行ったときで、彼の地の繁華街は歩道や床をピカピカの大理石や御影石でツルツルにするのがお好みなうえ、エアコンの水漏れ、雨漏り、水拭きであちこちに「小心地滑」(滑るよ)と黄色い札が置いてある。アスファルトやブロックのところはともかく、そんな札が無くても滑る時は滑る。グリップしなくなっているクロックスならなおのこと、しょっちゅう滑ってひやっとした。
雨がちの時季だったので、いつもどこかが濡れたり湿ったりして滑りやすかったが、雨が降っているときは、地上と地下街をつなぐ階段を、手摺に掴まってへっぴり腰で降りた。その脇を踵の高いサンダルを履いたお嬢さんが颯爽と登り降りするのを見て、濡れた床との接地面積が小さい方が滑らないという当たり前のことを思い出し、情けない気分になったものだった。
結局、今日は帰るという日の朝に最後の散歩をしていて、工事中の交差点の水たまりで転倒、ウールのコートを泥だらけにしてしまった。(転んだとき、こういうときになんと言ったら上海人らしいのかなあと思いつつ、呻きながら起き上がった)(コートの泥汚れは乾いても落ちず、帰ってすぐにクリーニングに出したが、特別料金だった)
帰国の途に着き、空港で搭乗手続きをし、荷物を預けてほっとしていたら、トイレの前に最後の「小心地滑」があった。