鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

上海的甜品

知り合いの女性に、「上海にルビーっていうお菓子屋さんがあるんだけど、懐かしい味がするの」と教わって、行ったことがあった。紅宝石 Ruby という看板を掲げた小さなお店で、ショーケースを指さしてケーキを買った。ケーキは日本の洋菓子店と同じく紙の箱に入れてくれた。ケーキのスポンジ生地は硬めで、バタークリームが使ってあって、たしかに懐かしい美味しさだった。店名が英語なのは、旧英国租界に近いからかと思ったりした。
それが十年ほどまえのことで、こないだ久し振りに行ってみたら、新しい建物になっていたがほとんど同じ場所にあった。広くなり、奥にはコーヒーを飲みながらケーキを食べられるイートインコーナーが出来ていた。中年の一人の男性と一人の女性が語り合っていたが、ほとんどの客が持ち帰りだった。市内に何店舗もあるらしい。
ショーケースの中のショートケーキは、衛生面を考慮してか、あらかじめ一つずつプラスチックの容器に入れてあり、コンビニやスーパーみたいな感じがした。そこで、これはモンブランだろうと想像してケーキを一つ買った。プラスチックのスプーンがついてきた。
プラスチックのカップに入ったモンブランは、波のようなもようを描く白いホイップクリームの上に赤い飾りの果物がのっていて、クリームの下には甘く煮た豆がみっしり……と思ったら、グリーンピースくらいの大きさに切り揃えられた栗で、底に薄いスポンジケーキが二、三枚敷いてあった。甘すぎるということもなく美味しかった。そしてやはり懐かしい味だった。
製菓業界の人なら、わたしたちが「懐かしい」と感じた味の理由を解き明かしてくれるかもしれないが、特に望んではいない。