鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

窩頭(かとう)

義和団の乱(一九〇〇年)で、八カ国連合軍に北京が占領されたとき、西太后西安に逃れた。西安の近郊で西太后が空腹を訴えたため、随員が近くの農家を訪れ、なにか食べるものをと求め、手に入れたのがとうもろこしの粉で作った窩頭(かとう。窩窩頭とも大窩頭ともいう)。西太后はこれを食べて、たいへんおいしいと喜び、のちに北京に戻ってからもしばしば作らせて食べた……と言われている。
窩頭は、とうもろこしの粉を練って、丸めて、蒸かしたものらしいが、とうもろこしは加熱したものを粒のまま食べることが多いので、今ひとつ味が想像することが出来ない。日本でならおにぎりのようなものだろうか。中国の北のほうでは、現在でもおやつや食事に食べるそうだ。

台湾の國立故宮博物院に、三希堂という清の乾隆帝の書斎名を冠したレストランがあって、お茶や点心が楽しめる。メニューはときどき変わる。メニューを見ていたら小窩頭(小さい窩頭)があったので、これが西太后が目黒で食べた秋刀魚かと早速注文してみた。
出てきた小窩頭は茶色で親指ほどの大きさのいびつな円錐形。箸でつまんでひっくり返して見ると、火の通りをよくするための窩(くぼみ)があった。表面はつるつるしており、口に入れると固くて弾力がある。ところどころの粗挽きのとうもろこしが主張をする。特に味はない……と思いながら噛んでいると、とうもろこしの味がしてきて悪くない。慣れるとおいしく感じられてきた。