鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

〈みち怪〉読者の集い(本番)

九月二十五日、仙台市仙台文学館で開催された「〈みちのく怪談プロジェクト〉読者の集い」に行った。
午後五時頃に地下鉄台原駅に着き、台原森林公園を通って会場に向かったのだが、仙台文学館の案内看板に沿って脇道に入っていくと、うっそうとした雑木林(所々に松)の中の、木の根で盛り上がった狭い道だった。「夜間は通行しないで下さい」という看板があったが、日暮れで文字も読みがたくなっていたので追われるように歩いた。明るい開けた場所に出たときは安心して、今日の仕事は終わったような気持ちになってしまった。
仙台は午前中は大雨で、午後になってから止んだそうだが寒かった。
仙台文学館に到着すると荒蝦夷のスタッフと東北怪談同盟の方々が会場を設営中で、蝋燭の火が入った行灯が並んでいた。冷えた空気の中に金木犀の香りが漂っていた。黒木あるじさん(『幽』の半袖Tシャツ着用)がいたのでご挨拶をし、働いている人達に紹介してもらう。杉村顕道の娘さんもいらしていて、『彩雨亭鬼談』の特装本を見せていただいたが、杉村夫人の着物を使ったそうで、羽根のようにも笹の葉のようにも見える青い紋様が降り積もったモダンで上品な意匠の(おそらくは)縮緬で、たいへん美しい御本(御を付けずにはいられない)だった。
午後六時半。風車紋様の和服に文庫結び、おろし髪で少女のような石垣のり子アナウンサーの朗読から始まり、赤坂憲雄東北芸術工科大学東北文化研究センター所長)、東雅夫、土方正志(荒蝦夷代表)の三氏で「みちのく怪談」鼎談。鼎談の合間に怪談の朗読、白塗りの森繁哉の舞踏が入る。最初の方で、黒猫が火を点けられたように客席を疾走して、演出かと思ったらハプニングだった。(追記。猫ではなくタヌキだった模様。「ムジナかと思った」と呟いた自分の勘は当たっていたらしい)
自分が現代語訳をした『奥州ばなし』も一話朗読されたが、初めて聞いた話のように新鮮に面白かった。石垣アナの語りと、会場の池も庭も舞台にした森繁哉の舞踏の化学反応が素晴らしい。
先日締め切られた「みちのく怪談コンテスト」の話題も出たが、このコンテストはこれで終わりではなく、第二回も予定されているとのこと。少なくとも五回はやりたい、その中で今までにない新しい「みちのく」が現れることを期待するというようなことを赤坂氏と東氏が仰っていた。この動きに刺激され「九州怪談」とか「東京怪談」が始まったりしたら面白いことだと。(記憶があいまいなことを断っておく)
お終いに、発売が予定されている黒木あるじ撮影のDVDの宣伝映像を見た。怪しい影が映っているわけでもないのに、なぜか胸が騒ぐような映像だった。

画像は打ち上げを行った居酒屋での一枚。ご本人(複数)の許可を得て掲載しています。
右から、土方正志さん、戸田書店山形店の笠原店長、黒木あるじさん、東雅夫さん。