鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

イーディス、アリス、なつ

クリムゾン・ピーク』(ギレルモ・デル・トロ監督)の主人公イーディス・カッシング(ミア・ワシコウスカ)は小説家志望の若い女性。父親の伝手で編集者に原稿を読んでもらうが、編集者には「幽霊譚などではなく、ロマンス小説を書いたほうがいい」と冷たくあしらわれる。二十世紀初頭のアメリカでは、女が書く小説は一部の例外を除いて恋愛小説だったので、イーディスは筆跡で女だとわからないようにタイプライターで清書し、別の出版社へ匿名で投稿しようとする。(『クリムゾン・ピーク』から約五十年後のアメリカで、アリスという女性がタイプで打ったSF小説をJames Tiptree Jr. の男性名で雑誌に投稿し、掲載されている。)
スクリーンに写るイーディスの文字は流麗な筆記体
十九世紀後半の本邦の樋口一葉も達筆だが、不都合はなかったようだ。書かれた内容と巧みな水茎に違和が生じなかったからかも知れない。美しい文字で立派な文章を書くとは限らず、悪筆で美文ということは往々にしてある。