鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

図書室の魔法(小学校の思い出)

卒業した小学校が今年の三月で閉校になった。校長先生に頼まれて閉校記念文集に書いた「小学校の思い出」をここで公開する。
タイトルはジョー・ウォルトンの『図書室の魔法』(上下巻、茂木健訳、創元SF文庫)から借りた。



   図書室の魔法  勝山海百合

 図書室で短編映画を鑑賞した二年生のとき、書棚の『アンドロイド・アキコ』に目がとまり、三年生になって本が借りられるようになったら絶対に借りようと思った。実際、まっさきに借りて読んだ。「アンドロイド・アキコ」は、死んだ娘の代わりに創られたアンドロイドのアキコが主人公で、彼女が成長し、恋のようなものをする話だ。アキコは自分が創られた存在であることを知らず、ある意味無垢な存在であったが……。こういう話をもっと読みたいと思った。
 最近調べて、図書室で借りた本は小峰書店から出た児童向けのSFアンソロジー、「アンドロイド・アキコ」はその中の一編で表題作、著者は児童文学者の古田足日だとわかった。成長した今となっては、ギリシャ神話にある、ピグマリオンが理想の女性を彫刻して生み出す話のヴァリエーションだとわかるし、創造者の想定を超える行動を取るという点で、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編「接続された女」(浅倉久志訳。『愛はさだめ、さだめは死』ハヤカワSF文庫所収。美しいとは言い難い女性が、美女の肉体と電極で接続され、コントロールする話。著者は女性だが長くそのことを秘していた)の類話だ。
 先生からは偉人伝を、上級生の女の子からはルパンやホームズのシリーズを勧められたが、なんとなく合わなくて江戸川乱歩の少年探偵団シリーズをよく読んでいた。のちに中学校の図書室で、児童向けでない原液の江戸川乱歩に出会ってたいへん驚かされることになるが、それはまた別の話。
 もう少し大きくなって萩尾望都のマンガで光瀬龍レイ・ブラッドベリを知ると、海外SFの海へ漕ぎ出していくことになる……。



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