鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

「お父さんありがとう」と平金魚は言った。

五月十日、第六回ダ・ヴィンチ文学賞・第五回『幽』怪談文学賞授賞式が都内のホテルで行われ、出席した。

画像は、壇上で正賞および副賞を授与される『幽』怪談文学賞短篇部門大賞の平金魚さん。同じ壇上に『幽』怪談文学賞長篇部門大賞の三輪チサさん。右の端に写っているのがダ・ヴィンチ文学賞大賞の工藤水生さん。
受賞者のみなさん、おめでとうございます。
平さんの受賞スピーチが印象に残っているので書き記す。あとで本人に確認した部分もあるので、スピーチ通りではないが、こういうことを言った。
「……私の父は、若い頃、学生だったとき久我山(東京都)の学校に通っていたのですが、ある日、ボートに乗って遊ぼうと、井の頭公園を目指して、玉川上水のほとりを歩いていると、水死体を発見したのです。一緒にいた友達に文学少年がいて、その水死体が太宰治だとわかったのです。(会場、どよめく)……お父さん、ありがとう……ボート乗り場の係の人に言って、それから大変な騒ぎになったそうで、期せずして父は、太宰治の遺体の第一発見者になったのです……」
当時、太宰治が山崎富栄と死出の旅に出ていたのは知られていたので、件の友達は「そろそろ太宰の死体が見つかる」と言っていたのだとか。この日は昭和二十三年六月十九日、太宰の誕生日のことで、見つかった太宰治と山崎富栄の体は赤い紐で結ばれていたはず。
と、ここまで書いて思い至ったのだが、会場のホテルは恵比寿にあった。恵比寿は、水死体の別の言い方でもある。