鳥語花香録

Umiyuri Katsuyama's weblog

A New Beginning / 人身御供

  人身御供 Toshiya Kamei 勝山海百合訳

 きものの乙女が震える。白い衣の神官が彼女を引っ立て、彼女はよろめき、ふらつく。紅潮した頬の目隠しに涙が滲む。猿ぐつわで声も出ない。それでも彼女の若い肉体は役目を果たすだろう。遠く響く鐘の音が儀式の始まりを告げる。残酷ではあっても、千年続く伝統を維持しなくてはならない。神官は咳払いをし、黒い烏帽子に神経質に触れ、闇に沈む祭壇に向かって進む。ヨフネヌシは生血を求めて暗がりから現れる。か弱い乙女のふりをかなぐり捨て、トコヨは短刀を振りかざす。彼女が異形の神に向かって突進すると、刃が闇の中で閃く。すべてを終わらせるために。


原文"A New Beginning"はTrembling With Fear, April 11, 2021掲載 。(カメイさんの許可を得て公開)
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ヨフネヌシはリチャード・ゴードン・スミス(Richard Gordon Smith)が著した『日本の昔話と伝説 Ancient Tales and Folk-Lore of Japan』に登場する生贄を求める神。